オール1の落ちこぼれ、教師になる

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人間万事塞翁が馬

川越市のおかやす学(岡安学)です。

このブログ記事は2014年10月25日に掲載したものです。






わたしの愛読書に、私立豊川高校教諭の宮本延春(みやもとまさはる)さんの、「オール1の落ちこぼれ、教師になる」(角川文庫)があります。



本の帯に書いてある略歴です。

1969年、愛知県に生まれる。

小学校の時にいじめで学校嫌いになる。

中学1年生、「オール1」の成績表をもらう。

中学3年生、漢字は名前しか書けず、
英語の単語はBOOKだけしか知らず、
九九は2の段までしか言えない(落ちこぼれ)
になる。

15歳、中卒で見習い大工に就職。

17歳、フリーターでミュージシャンを夢見る。

18歳、両親と死別、天涯孤独の身となる。

23歳、アインシュタイン博士のビデオを見て感動。

「小学3年のドリル」を買って猛勉強。

24歳、定時制高校入学(私立豊川高校)。

全国模試で上位に、数学は県内トップになる。

27歳、難関国立大学に合格(名古屋大学)

大学院まで9年間研究に没頭する。




落ちこぼれの気持ちがわかる「オール1先生」として、私立豊川高校で活躍中。宮本さんは、幼いころからいじめの標的にされたことで、ひどい人間不信に陥っていたそうです。

そのときのことをこう述懐しています。




「小学校でも中学校でも、数少ない友人以外のクラスメイトは、ほとんどが私の心と体を傷つけるような存在であり、持ち物を隠されたり壊されたり、突然、殴られたり蹴られたりして顔面がアザだらけになったり、足に画鋲を
刺されてなかなか抜けなかったり、修学旅行の班を作るのに仲間外れにされてどこにも入れなかったり、さまざまな仕打ちを受けました。」



いじめというのは、やったほうは自分の行いを忘れてしまうものなのかもしれませんが、受けた者は、そのことを生涯引きずってしまうものなのです。


中学卒業後、大工の見習いをしても、意地の悪い親方に怒鳴られ続け、二年後に退職すると、職を転々とします。



その後、音楽を通じてバンド仲間と知り合うことで、ようやく仲間に心を開けるようになりました。


転機が訪れました。


バンド仲間の親戚が経営している建設会社にアルバイトで就職したことでした。


そこの社長や専務は、両親のいない宮本さんを大変気遣って、親切にしてくれて、そうした理解ある環境の中で、宮本さんは一生懸命働いて、正社員として迎えて入れてもらいました。


社会に出て、仕事がこれほど楽しい、と思ったのは初めてだったそうです。


さらに、中学のときから続けていた少林寺拳法の道場で、現在の奥さんと知り合い、この奥さんとの出会いが宮本さんの人生を一変させてしまうのです。


この奥さん、九九のできない宮本さんに愛想を尽かすことなく、付き合ってくれて、NHKスペシャルの「アインシュタイン・ロマン」という番組のビデオを見ることを勧めたのです。


この番組を見て、宮本さんの世界観は変わったと言っています。


これ以降の猛勉強により、オール1の先生が生まれることになります。



宮本さんは、言っています。



世間の荒波の中で、自分を救ってくれたのは、信頼できる人との出会いであったと。


人によって傷つけられたひとは、人によって癒されるしかないと思います。


人間万事塞翁が馬。


今、生きていることがつらいと思っている方。


必ず、生きていてよかったと思えることがありますから、あきらめないでください。


最後に宮本さんの本の中の、印象に残った言葉を引用して終わります。




「人間同士の触れ合いで一番大事なのは、この「信頼関係」です。・・・教師と生徒の関係は、お互いに相手を信頼する気持ちがなければ、心の通った触れ合いは絶対に出来ません。
・・・教師が‘‘聖職’’と言われ、先生というだけで尊敬された時代は、もうとうの昔に去ったのです。 

教師になった今、思うのは、生徒の信頼を得るには、教師のほうから働きかける努力が必要だということです。毎日の挨拶や何気ない一言、授業での対応や教科の指導、場面に応じて褒めたり叱ったりするタイミング……そういう日常の気配りの積み重ねの中から、少しずつ信頼感が育っていくのです。そして、この信頼があってこそ、初めて私の言葉が相手に届くのです。言葉は、信頼の上に立ってこそ、言葉の本当の力を発揮できるのです。」

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