終活のうそ

無理に準備しなくてもいい

川越市のおかやす学(岡安学)です。

永代供養(えいたいくよう)という言葉をご存知でしょうか。

なにかしらのご事情で、ご先祖のお墓やお位牌を継承や供養できないご家族がいます。

そのため、お寺や霊園の共同墓地に合祀(ごうし)して、これから先の供養を僧侶にお願いすることです。

その際は、ご先祖のお墓からお骨を取り出して、墓じまい(お墓を撤去すること)をしなけければなりません。

少子高齢化が進み、お墓を継承できる人が少なくなりつつあります。

よく目にするケースが、うちは、こどもが女の子しかいないから、というものです。

結婚されて、96パーセントの女性が夫の姓に変えています。

他家へ嫁いでしまったから、実家のお墓は継げない、というものです。

先進国で唯一の夫婦同姓義務国の日本では、姓が選択できないことで、自分の先祖のお墓も継承できない事情があるようです。

男のこどもばかりでも、独身を通す人もいますし、結婚しても、こどもを持たない人、持てなかった人もいます。

男の子が生まれても、絶えてしまう家もあるのです。

この墓じまいについて、気をつけていただきたいことがあります。

それは、墓じまいやお仏壇の処分は、自分が元気なうちにしておこう、と焦らないことです。

たとえ独身であっても、歳を重ねても、行先に不安を覚えたとしても、です。

むしろ、墓じまいを考えるときは、体力的にも、気力も、充実しているとき、なのです。

俗に言えば、運気が上昇しているときなのです。

自分が元気だから、もっと身軽になりたい、と断捨離感覚で、墓じまいをして、これで安心して旅立っていくことができると思うのかも知れませんが、やはり後悔するときもあるのです。

それはどのようなときでしょうか。

実は、病気になったり、死別したり、思いもよらなかった困難に遭遇したりしたときなのです。

そういうときに限って、お墓が、お仏壇が、心の拠り所になっていることに気づくのです。

話が少しはずれますが、今の時代、特に女性ですが、90歳を超えて生きられる方が多くなりました。

80代で亡くなる女性の葬儀が少なくなっているのです。

そうなると、90歳を超えた方たちのこどもたちは、70歳前後になっているのです。

老少不定(ろうしょうふじょう)という言葉があります。

人間の寿命はわからないもので、老人が先に死に、若者が後から死ぬとは限らないという意味です。

親が長生きするということは、そのこどもが先に死んでしまうことが、実際に多々あるのです。

親子が認知症で、同じ施設に入所していることもあるのです。

そうして、自分が若かったころに、思い違いをしていたことに気づくのです。

それは、老いることで、欲望や執着を手放すことができると思っていたことです。

しかし、逆なのです。

老いてなお欲望や執着が強まるのです。

90歳まで生きたら、今度は、100歳まで生きたい、と願うのが人間なのです。

ぽっくり死にたいと日頃から言っている人が、今日か明日に死にますよ、と言われると、それは嫌だ、と言うものなのです。

終活のうそ。

生きたいという本音があるのなら、無理をして、準備することはありません。

生きるということは、お互いに迷惑をかけあうことなのです。

誰もが必ず通る道だからです。

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